親権
親権は何を基準にして決められるのか
離婚の際,夫婦のいずれか一方を未成年の子の親権者と決めなければなりません。
夫婦の協議や離婚調停でも合意に至らない場合などは,離婚訴訟で裁判所が親権者を指定することもあります。
この場合の主な判断基準は次のものがあります。
①母性(母親)優先の原則
②継続性の基準
③子の意思の尊重
④きょうだい不分離の基準
⑤面会交流の許容
⑥奪取の違法性
①母性(母親)優先の原則
これは,乳幼児については,特段の事情がない限り,母親の監護養育にゆだねることが子の福祉に合致するという考え方です。
従来の裁判例はこの原則によるものが多く,現在の家裁実務においては,乳幼児の場合に母親が親権者と指定される事案が多いです。
②継続性の基準
子の健全な成長のためには親と子の間の継続的な精神的結びつきが重要であって,養育看護者の変更は子の心理的不安定をもたらすため,現実に子を養育監護している者が優先されるという考え方です。
③子の意思の尊重
おおむね,10歳以上の子については,裁判所がその子から意見を聞き,これを尊重します。
④きょうだい不分離の基準
幼児期のきょうだいは離れて生活すべきでないという考え方です。
幼児期に,きょうだいが生活を共にすることによって互いの人格形成の資するもので,両親の離婚によって心理的に不安定になるのに,さらに,きょうだいと離れてしまうと,二重に苦しみを与えてしまうからです。
⑤面会交流の許容
仮に親権者となった場合に,親権者とならなかった相手方配偶者に対して,子との面会交流を認める意思があるかどうかという点も親権者として適切かどうかの判断にあたって考慮されます。
離婚しても,親子関係がなくなるわけではないので,親権者ではない相手方配偶者と子の関係に配慮することができなければ親権者として適切でないという判断もあり得るということです。
⑥奪取の違法性
子と別居していたところ,無理矢理,子を連れていった(奪取した)場合でそれに違法性があるときには,そのような奪取行為に及ぶこと自体が,親権者としての適格ではないということになります。
違法な奪取行為によって,長期間,子を養育看護していたとしても,上記②の継続性の基準を充たすことにはなりません。
親権と監護権を分けることはできるか?
監護権は,親権のうち,子の心身の成長のための教育及び養育を中心とする権利義務です。監護権は,本来,親権に含まれるものですが,離婚の場合には,監護権者と親権者を別に定めることもできます。
親権者を変更することはできるか?
離婚後に親権者を変更する際には,必ず家庭裁判所の調停・審判によって行う必要があります。
親権者の変更の調停手続では,次のような事情を主張したり,資料等を提出したりします。
・申立人が自分への親権者の変更を希望する事情
・現在の親権者の意向
・今までの養育状況
・双方の経済力や家庭環境
・子どもの年齢,性別,性格,就学の有無,生活環境等
なお,話合いがまとまらずに調停が不成立となった場合には,自動的に審判手続が開始されます。この場合は,裁判官が一切の事情を考慮して,審判することになります。
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