離婚の手続き(協議離婚,調停離婚,裁判離婚)

離婚の手続き(協議離婚,調停離婚,裁判離婚)

離婚手続きの種類

離婚の手続きとして,①協議離婚,②調停離婚,③審判離婚,④裁判離婚があります。
①協議離婚は,夫婦の話合いの結果,離婚の合意に至る場合です。
②調停離婚は,家庭裁判所の調停において,話合い,離婚する場合です。
③審判離婚は調停離婚が成立しなかったときに家庭裁判所が職権で審判を行う場合です。
④裁判離婚は,離婚調停が成立しなかった場合,離婚訴訟を提起し,離婚をする場合です。

ただ,③の審判離婚がなされるのは極めて稀なケースです。
そのため,通常は,協議離婚,調停離婚,裁判離婚の3つです。

協議離婚

調停離婚

離婚協議がまとまらなければ調停へ,調停が不成立となれば裁判(訴訟)へと進んでいきます。

調停は,家庭裁判所において調停委員会が進める紛争解決制度で,家事審判法に定められた制度です。
調停委員会は,家事審判官1名(裁判官)と民間から任命された家事調停委員2名(男女1名ずつ)とで構成されます。
調停委員会が,中立の立場で,当事者双方の言い分を聞き,当事者の合意を目指します。
実際の調停期日では,当事者(代理人を含む)と話をするのは,調停委員2名で,家事審判官(裁判官)と直接,話をすることはまれです。調停委員は,適宜,家事審判官に報告し,評議をしながら,調停を進めていきます。
当事者が同席して,調停委員に言い分を伝えるのではなく,当事者が交互に調停委員と話をするので,調停期日で,当事者同士が顔を合わさないことがほとんどです。
最近は,各調停期日の終わりに,その日のやりとりの確認や次回期日までに準備すべき事項の確認を行うために,調停委員と当事者双方が同席することがありますが,顔を合わせることを望まなければ,配慮をしてもらえます。
そのほか,調停手続の開催中だけでなく,その前後に,当事者が顔を合わさずにすむように,裁判所への出入りの時刻が重ならないように配慮されています。

離婚調停は弁護士無しで自分だけでできる?

離婚調停を申し立てたい,または,離婚調停を申し立てられた,という場合,弁護士に代理人になってもらうよう依頼しなければならないでしょうか。自分だけで調停手続に出席して話合いを進めることもできるのでしょうか。

家庭裁判所の離婚調停手続は,弁護士が就いていない当事者本人だけでも手続きが進むよう工夫されています。
ですので,必ずしも弁護士に依頼せずとも,自分で離婚調停の申立てをしたり,離婚調停に出席したりすることはできます。

家庭裁判所での調停期日では,当事者は,交互に,男女2名の調停委員と話をします。
調停委員は,中立の立場で,当事者双方の意見を聞き,話合いをまとめるよう当事者双方の意見を調整していきます。
ところが,現実には,調停委員の個性も様々で,事案や場面によっては,あまり強く自分の意見を主張しない当事者のほうに,他方当事者の意見を受け入れるよう働きかけるということも,残念ながらあります。
そういうときには,だんだんと相手方の主張に押し切られていくような展開になることもあるでしょう。

離婚調停を経験することが初めてで,調停委員はどのような人なのかわからない,自分だけで離婚調停手続に臨むのは不安だ,という方は,弁護士を代理人に立てることが多いようです。
また,相手方に弁護士が就いている場合には,法的な主張が相手方から出てくるとうまく反論できないと考え,自分だけで離婚調停の臨むのは不安と思われる方も多いです。
さらに,調停手続でどのような主張を,どのようなタイミングでするのがよいのか,どのような証拠を,どのようなタイミングで提出するのが効果的か,ということなどがわからないため,弁護士に代理人になってもらいたいという方も多いです。
事務的なことについても,主張を書面で提出したほうがよいのか,書面で提出する場合にはどのような形式にすればよいのか,どの程度書けばいいのか,証拠を提出する場合には,何通用意すればよいのか,どこに提出すればよいのか,など離婚調停の本論以外のことであれこれ考え,調停委員や裁判所書記官,裁判所調査官などとやりとりをし,時間と手間をとられ,このようなこともストレスになる方もいます。

そのため,離婚調停になったら弁護士に依頼する方のほうが多いのではないかという印象です。

他方,離婚調停は自分で出席するけれども,話合いの進め方などについて弁護士からアドバイスをもらいたいという方もいらっしゃいます。
毎回の離婚調停の期日が終わってから,弁護士に相談に行き,次の離婚調停期日に向けたアドバイスを得る,という方法です。

当事務所では,選べるサービスメニューとして,
①離婚調停に代理人として出席する(調停離婚代理プラン)
②離婚調停は,自分で出席するけれども,継続的に相談したい(調停離婚カウンセリングプラン)
をご用意しています。

離婚調停への出席について

離婚調停の期日は,平日の日中に行われます。
調停の期日の所要時間は,1回につき2時間以上かかることがほとんどです。

仕事をしている場合,平日に休暇を取ることが難しい場合もあると思います。
離婚調停には,必ずご本人が出席(出頭)しなければならないのでしょうか。

弁護士が代理人となった場合には,代理人の弁護士だけでの出頭も可能です。
ただし,調停が成立する期日は,ご本人の出頭も必要です。

また,期日の内容によっては,代理人の弁護士だけでなくご本人も出頭した方がいい場合もございます。

ご本人が出頭した方がよいか否かは,ケースによって異なりますので,当事務所では,事案の性質やご本人のご意向を伺いながら,手続を進めていきます。

離婚調停をお考えの方は、弁護士にご相談ください。

離婚調停はどこの裁判所に申し立てればよいか

夫婦で離婚の話合い(離婚協議)をしたけれども,話がまとまらない場合や,はじめから直接,配偶者と話合いをしたくないので,第三者を介して話し合いたい場合には,離婚調停を起こすことができます。

この場合,離婚事件を取り扱う裁判所は,家庭裁判所です。
裁判所には,地方裁判所,簡易裁判所などもありますが,離婚問題など家庭の問題を取り扱うのは家庭裁判所です。

では,どこの家庭裁判所に調停を申し立てる必要があるでしょうか。

たとえば,もともと夫婦でいっしょに暮らしていたのが大阪市で,別居を開始して,配偶者は神戸市に居住している,自分はもとの住まいである大阪市に引き続き居住している,という場合はどうでしょうか。

離婚調停の管轄は,原則として,
「相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所」です。

夫婦での協議離婚ができなくて離婚調停を申し立てるという状況では,どこの裁判所で調停を行うかということについて,当事者で合意できることのほうが少ないため,「当事者が合意で定める裁判所」はないことが多いです。

そのため,ほとんどの場合,「相手方の住所地の家庭裁判所」に離婚調停を申し立てるということになるでしょう。

上記の例でいえば,自分が大阪市に居住していても,相手方である配偶者は神戸市に居住しているので,神戸市の家庭裁判所に離婚調停を申し立てなければならなりません。

ただ,これには例外もあり,別居により配偶者が遠隔地に居住している場合で,特別の事情がある場合には,自分の住所地の家庭裁判所が調停手続を行うことを認めてくれる場合もあります。
また,電話会議システムにより,裁判所に出頭せずに,調停を進めることができる場合もあります。

この例外的な取扱いをしてもらえるかどうかは,個々の事情によりますので,遠隔地に居住している配偶者に対して離婚調停を申し立てたい,配偶者から離婚調停を申し立てられた,という場合にはご相談ください。

離婚調停手続で提出した書面や証拠は,離婚訴訟手続に引き継がれるのか

調停と訴訟は,別個の手続です。

調停が不成立に終わっても,自動的に訴訟へは移行しません。また,調停に提出した資料は,当然には訴訟手続には引き継がれません。

そのため,訴訟が不成立になると,別途訴訟を提起し,書面も証拠も提出しなおす必要があります。

ただし,調停手続で提出した書面や証拠が,相手方から提出されることもあります。

そのような場合,調停手続と訴訟手続とで主張の内容が大きく異なることがあれば,裁判官が悪い心証を抱く可能性があります。

離婚訴訟手続をとる可能性がある場合には,調停手続から弁護士にご依頼いただけますと,訴訟を見据えた主張立証活動を行うことができますので,ご相談下さい。

離婚調停が成立した後の離婚届けの出し方

協議離婚する場合には,離婚届出用紙に,夫婦それぞれが署名捺印するほか,2名の証人の署名捺印が必要です。

調停離婚の場合には,役所に届け出るための調停成立調書の省略謄本(離婚することと離婚後の親権者が誰かが記載されているもの)を家庭裁判所から受け取り(調停成立時にその発行を申請します),それを添えて,離婚届出を提出します。この場合,届出者の署名捺印だけで足り,相手方配偶者,証人の署名捺印は不要です。

調停離婚の届出期限は,離婚調停成立日から10日です。
上記の調停成立調書の省略謄本は,調停成立した日に家庭裁判所から発行してもらえることはまれで,手にするまでに数日かかります。
また,離婚調停を代理人弁護士に委任していた場合には,調停成立調書の省略謄本は,まず家庭裁判所から代理人弁護士に郵送され,代理人弁護士から依頼者へ送られるため,さらに日数を要します。
そのため,実質的には,調停離婚成立日から届出期限までは,とてもタイトなスケジュールになります。

また,離婚届出を本籍地以外で行う場合には,戸籍謄本(全部事項証明書)を併せて提出しなければなりません。本籍地が現住居所から遠方にある場合には,郵送で取り寄せることになるでしょうから,調停離婚が成立する見込みがある場合には,あらかじめ戸籍謄本を取り寄せておかなければ,上記の調停離婚の届出期限に間に合わないことがあり,注意が必要です。

離婚調停を弁護士に依頼した場合には,この戸籍の取り寄せも弁護士が本籍地の役所に請求して行うことができます。

裁判離婚

 

 

離婚協議,離婚調停をするには別居する必要があるのか

離婚協議,離婚調停で話合いを進めていくにあたって,必ずしも別居しなければならないわけではありません。

しかし,離婚協議を夫婦で直接おこなうことができないような関係になっている場合には,代理人弁護士を通じて離婚協議をおこなうか,離婚調停で話合いを進めるか,という選択をすることが通常です。
この場合,同居していると,たとえば,離婚調停に出席する場合,夫婦とも自宅から裁判所へ出頭して,同じところへ帰宅するということになり,そのような状況に違和感を抱くという方が多いのが実情です。

別居をすることで配偶者と接触せずに,代理人弁護士を通じた協議や調停での協議を進めることができ,精神的負担は減ります。

また,決定的な離婚原因がないケースでは,別居を開始した時点から相応の期間が経過すれば,その他の事情も考慮されたうえで,婚姻関係は破綻したものと評価されて,裁判離婚が認められる場合もあります。

夫婦で直接,離婚協議をおこない話合いがまとまらない見通しである場合には,別居をしたうえで,代理人弁護士を通じてか,または,離婚調停で離婚の話合い進めていくほうがよい場合があります。

調停前置主義

離婚をしようと思った場合,夫婦間で離婚の合意ができれば,市区町村に離婚届を提出することで,離婚が成立します(このような協議による離婚のことを「協議離婚」といいます)。

しかし,夫婦間で離婚の話合いがまとまらない場合,裁判手続によって,解決しなければなりません。
離婚に関する裁判手続には,「離婚調停」と「離婚訴訟」があります。
離婚調停も,離婚訴訟も,家庭裁判所で行う手続です。
どちらの手続きから行ってもいいわけではなく,まずは調停の申立てをしてからでないと,訴訟を提起することはできません(「調停前置主義」といいます)。
これは,離婚が家庭に関する争いであることから,まずは,夫婦間での自主的な解決が期待されているため,話合いによる解決を図る調停手続からスタートさせるのが望ましい,という考え方に基づきます。
「離婚調停」は,話合いによる解決を目的とするものです。調停手続の中で,夫婦間で離婚の合意ができた場合には,調停成立となります。
調停手続の中でも,夫婦間で離婚の合意ができない場合には,調停は不成立となり,後述の離婚訴訟を提起することになります。
離婚調停は,調停委員2名による事情の聴き取りが行われ,夫婦間の意見を調整していきます。調停委員による事情の聴き取りは,当事者ごとに分かれて行うため,相手方と顔を合わせなくて済むようになっています。
離婚調停を申し立てる際には,親権者の指定,養育費,財産分与,慰謝料の請求等を同時に申し立てることができ,これらに関しても,離婚調停の中で話合いが可能です。
また,離婚調停の申立てと同時に,婚姻費用分担調停(離婚までの生活費の支払いを求める調停です)についても申し立てることが多くあります。この場合は,婚姻費用分担に関する話合いも,離婚調停と併せて同時進行で行われることがほとんどです。

離婚調停が成立しなかった場合,離婚訴訟を提起することになります。
離婚訴訟の中で,離婚が認められるには,民法で定められている離婚原因が存在しなければいけません。
離婚原因として,①不貞行為,②悪意の遺棄,③3年以上の生死不明,④強度の精神病で回復の見込みがない場合,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合,の5つが民法で定められており,これらのいずれかに当てはまる必要があります。
具体的な事情が離婚原因に当てはまるか(離婚訴訟を提起して,勝訴判決を得られる可能性があるか)については,難しい判断になることもありますので,弁護士にご相談下さい。
離婚訴訟の場合も,親権の指定,養育費,財産分与,慰謝料の請求について,離婚訴訟と同時に審理することを求めることができます。

調停を取り下げた場合でも,離婚裁判を起こせるか

離婚に関する裁判手続には,「離婚調停」と「離婚訴訟」があります。

離婚調停も,離婚訴訟も,家庭裁判所で行う手続です。

どちらの手続きからおこなってもいいわけではなく,まずは調停の申立てをしてからでないと,訴訟を提起することはできません(「調停前置主義」といいます)。

これは,離婚が家庭に関する争いであることから,まずは,夫婦間での自主的な解決が期待されているため,話合いによる解決を図る調停手続からスタートさせるのが望ましい,という考え方に基づきます。

離婚調停の期日を重ねても,夫婦間で離婚の合意ができない場合は,調停は不成立となり,離婚訴訟を提起することができます。

では,調停を申し立てた人(申立人)が調停を取り下げた場合には,離婚訴訟を提起することはできるのでしょうか。

取り下げ前の調停で実質的な調停活動が行われている場合には,調停前置の考え方に沿うことから,離婚訴訟を提起することができます。

他方,調停を申し立てた後すぐに取り下げたような場合には,離婚訴訟を提起することができない可能性が高いです。

 

離婚の手続きに関する記事はこちら

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