別居中,離婚までの生活費(婚姻費用)

別居中,離婚までの生活費(婚姻費用)

夫婦には,互いに同居義務,扶助義務があります。
原則として,別居をしている場合でも,離婚に至るまでの間,夫婦の生活費については,その資産・収入・社会的地位等に応じ,通常の社会生活を維持するために,夫婦が互いに分担しなければなりません。
実務上,金額の基準を定めている「養育費・婚姻費用算定表」が用いられています。

この生活費(婚姻費用)の金額については,まずは夫婦で話し合って決めます。
夫婦の話合いで金額が決まらない場合には,家庭裁判所の調停を申し立て,調停手続で話合いを行い具体的な金額を決めることが可能です。
調停でも合意できない場合には,裁判所が審判によって決めます。

妻が不貞行為に及んだ場合でも夫は婚姻費用を支払わなければならないのか?

妻が不貞行為に及んでいる場合には,妻が有責配偶者(婚姻の破綻について,主として責任のある配偶者)となりますが,このような場合でも,夫は妻に対して,婚姻費用を支払わなければならないのでしょうか。

有責配偶者が相手方に請求できる婚姻費用は,通常のケースよりその金額が低く判断されることがあります。これは,夫婦の扶助義務に自ら違反した者が,自らはその義務を怠りながら,他方に扶助を求めることは,相互に相手方の信頼を裏切らないように行動すべきであるという法原則(信義則)に反する,正当な権利行使とは認められない(権利濫用)と考えられるからです。

例えば,別居原因が主として妻の不貞行為にあり,妻はその後不貞の相手男性と一時同居していたという事例では,

・妻の生活費にあたる部分の婚姻費用の請求は権利の濫用として許されない

・妻と同居の未成年の子の実質的監護費用(養育費相当額)を婚姻費用として請求しうるにとどまる

という判断がされました(東京家審平成20年7月31日)

婚姻費用の請求は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で手続しなければならないのか?

婚姻費用請求の調停の管轄は,原則として,「相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所」です。

婚姻費用の支払が受けられず婚姻費用を請求する調停を申し立てるという状況では,どこの裁判所で調停を行うかということについて,当事者で合意できることの方が少ないため,「当事者が合意で定める裁判所」はないことが多いです。

そのため,ほとんどの場合,「相手方の住所地の家庭裁判所」に離婚調停を申し立てることになるでしょう。

ただ,別居により,配偶者が遠隔地に居住している場合で,特別の事情がある場合には,自分の住所地の家庭裁判所が調停手続を行うことを認めてくれる場合もあります。

また,電話会議システムにより,裁判所に出頭せずに調停を進めることができる場合もあります。

この例外的な取扱いをしてもらえるかどうかは,個々の事情によりますので,ご相談ください。

配偶者が,子どもを連れて突然家を出て行った場合にも,婚姻費用を支払わなければならないのか?

配偶者が,子どもを連れて突然家を出て行った場合にも,婚姻費用を支払わなければなりません。

夫婦には,互いに扶助義務があり,離婚に至るまでの間は,夫婦の生活費については,その資産・収入・社会的地位等に応じて,通常の社会生活を維持するために,夫婦が互いに分担しなければならないからです(婚姻費用の分担)。

家を出る際,夫婦の共有財産である預金を持ち出した場合はどうでしょうか。

この場合であっても,基本的には,義務者(婚姻費用を支払う側)に定期収入があれば,その中から婚姻費用を負担すべきであり,持ち出した預金は財産分与の際に精算すべきです。

ただし,権利者(婚姻費用を請求する側)が預金を生活費に充てていて,その費消した額が婚姻費用の分担額を遙かに上回る場合には,権利者は改めて婚姻費用の請求ができない可能性があります。

別居する際の引越費用は,婚姻費用として請求できるか

婚姻費用は,その資産・収入・社会的地位等に応じ通常の社会生活を維持するために,夫婦が互いに分担するものであり,いわば結婚生活をするための生活費です。

別居をする際の引越費用は,結婚生活をするための費用とは認められず,婚姻費用として請求することは困難です。

もっとも,婚姻費用とは別に,引越費用を負担してもらう旨の合意は可能です。婚姻費用の取り決めをする中で,引越費用についても相手方に負担してもらえるよう話し合うことが必要です。

婚姻費用の支払義務者の年収が2000万円を超える場合

「婚姻費用算定表」には,義務者(婚姻費用を支払う側)の年収が2000万円を超える場合(事業所得者は,事業所得が1409万円を超える場合)について,定められていません。
この場合は,個別具体的な事情について考慮しながら婚姻費用を定めることになります。
個別具体的な事情としては,従前の生活実態を踏まえて,税金の負担額,貯蓄率,特別経費等を考慮することになります。

 

離婚とお金の問題

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